2026年7月の療養費改定で、整骨院 で 働く人に何が変わっ たのか

2026年7月、柔道整復の療養費が改定されました。改定率は+0.6%。数字だけ見れば小幅です。

ただ、働く人にとっての変化は、率では測れません。今回変わったのは金額よりも、「何が認められ、何が認められないか」のほうだからです。

「柔道整復師 療養費改定 2026」は月におよそ880回検索されています。それだけ多くの方が気にしている、ということです。この記事では、整骨院で働く人に関係する部分だけを取り出して書きます。金額の細目には触れません。求職者にとって大事なのは、初検料が何円上がったかではなく、この先どういう働き方が求められるかだからです。

先に書いておきます。当社も影響を受けます。「うちは関係ありません」とは言いません。そのうえで、何をしてきたか、これから何をするかを書きます。

働く人に関係する、6つの変更

変わったこと 働く人にとっての意味
2部位目が80%に逓減
従来は2部位目も100%でした
部位数で組み立てるやり方が、そのままでは通らなくなります。1件あたりの中身が問われます
明細書発行加算の新設
従来の月1回制から、発行1回あたり10円の算定に
「何をしたか」を紙で渡す機会が増えます。説明できることが仕事の一部になります
長期・多部位は償還払いの可能性
前月までの連続する12か月で、通算8か月以上かつ9部位以上が対象基準。施行は令和9年1月以降の予定
長く保険で通っていただく前提の経営が、成り立たなくなります。ここがいちばん大きい変化です
負傷名と負傷原因の不一致による返戻が増加 記録の質が、そのまま収入に直結します。「いつ・どこで・何をして・どこを痛めたか」を書けるかどうか
自己施術・自家施術は支給対象外 自分自身、家族、同じ施術所に勤務する施術者への施術は、療養費の対象外です。施術ができないという意味ではなく、保険での請求ができないということです。職場で施術を受ける場合は自費になります
AI審査・オンライン請求へ
完全オンライン請求は令和13年頃の予定とされています
カルテ・施術録・レセプト・領収書の整合性を、機械が見るようになります。「だいたい合っている」が通らなくなります

※制度の詳細や個別の算定については、厚生労働省の通知や所属団体の資料をご確認ください。本記事は働く人への影響を整理したもので、制度解説を目的としたものではありません。

6つとも、同じことを言っています

並べてみると、方向がひとつであることが分かります。

記録と説明ができる人の価値が、上がります。

これまで、記録は「あとで書くもの」「請求のために必要な作業」と扱われがちでした。これからは、記録そのものが仕事の質になります。

逆に言えば、手技だけを磨いてきた人にとっては、厳しい変化です。どれだけ上手でも、何をしてどう変わったかを書けなければ、その施術は認められません。

これは、2026年に始まった話ではありません

今回の改定だけを見ると、突然の変化に見えます。実際には、この流れは10年以上続いています。

年度 柔道整復療養費の総額 施術所数
平成26年度 3,825億円 45,572か所
平成30年度 3,278億円 50,077か所
令和4年度 2,747億円

総額は8年で約28%減りました。一方で施術所の数は増え続けています。この2つを割ると、こうなります。

1施術所あたりの療養費は、平成26年度の約839万円から、平成30年度には約655万円へ。4年で約22%減っています。

総額の減少幅(14%)より、現場で感じる厳しさが大きいのは、分母が増え続けているからです。令和4年度はさらに進んでいると考えられます。

ちなみに、柔道整復療養費が国民医療費に占める割合は0.59%(令和4年度)です。国民医療費が毎年増えるなかで、この分野だけが縮んできました。

つまり、保険に依存した形は、個々の院の努力とは関係なく縮んできたということです。今回の改定は、その流れのなかの一区切りにすぎません。

正直に書きます ― 当社も影響を受けます

保険で長く通っていただいていた方への対応は、当社でも変わります。影響がないと言えば嘘になります。

ただ、この改定は「柔道整復の療養費をなくすための改定」ではありません。求められているのは、正しい負傷原因の聴取、正確な施術記録、適正な請求、患者さんへの丁寧な説明です。本来やるべきだったことを、やっているかどうかが問われていると受け止めています。

当社が備えてきたこと

収益の柱を4つに分けています

保険だけに依存する形にはしていません。

  • 整骨院での施術 ― 鍼灸・超音波・EMS・テーピング・交通事故によるおケガ・日常生活やスポーツなどによる怪我の施術
  • 自費のメニュー ― 姿勢分析・整体・カイロプラクティック・脊柱骨盤の矯正・吸玉・ウォーターベッド・リンパ・足つぼ・パーソナルトレーニング
  • 鍼灸 ― 経絡施術、パルス鍼
  • リラクゼーション ― 全身ほぐし整処ゆるり 11店

言葉だけでは伝わらないので、数字を出します。

項目 実績
鍼灸受診率 73.2%(2026年7月・全24院・延べ16,488名)。20期58.6% → 21期69.2%と、1年で11.6ポイント上昇
姿勢分析 新規にお越しいただいた方はグループ累計102,544名(2026年8月31日現在)。原則として全員に姿勢分析を行っています
鍼灸師 29名。全員が実際に鍼の施術を行っています(2026年9月時点)
店舗 整体整骨院24院+リラクゼーション11店=35店舗(大阪11・兵庫12・東京1)。2004年創業

これは今回の改定を受けて始めたことではありません。鍼灸受診率は1年前から上げ続けてきたものですし、リラクゼーション事業も以前からあります。上のような構造は以前から見えていたからです。今回の改定を見てから動いたのではありません。

記録と法令を、いちばん先に教えています

当社の育成では、学ぶ順番が決まっています。技術は4番目です。

① 安全と法令 → ② 評価 → ③ 解剖・生理 → ④ 機器の操作 → ⑤ 説明 → ⑥ 再評価と記録

この順番は、今回の改定に合わせて決めたものではありません。危ないと思ったときに手を止められる人が先に必要だからという理由で、以前から決めていたものです。

結果として、①の法令と⑥の記録が、今回いちばん問われる部分になりました。

院内認定も、知識の試験ではありません。行動を見る七領域で確認します ―― 安全評価・機器理解・開始前操作・実施中管理・中止対応・臨床推論・説明と記録。ここにも記録が入っています。

説明の練習を、年3回やっています

明細書を発行する機会が増えるということは、説明する回数が増えるということです。

当社は年53回・168時間の勉強会(すべて就業時間内)を行っており、そのうち接遇・コミュニケーションが年3回あります。技術の話より回数が多いくらいです。患者さんに伝わらない技術は、無いのと同じだと考えているからです。

日程はすべて公開しています。53回の内訳と開催日はこちら

会社の選び方 ― 面接で聞く5つの質問

制度が変わるとき、会社によって差が出ます。備えている会社と、そうでない会社があります。求人票を読んでも分かりませんが、聞けば分かります。

質問 これが返ってきたら要注意
1 保険以外の収入の柱はありますか。それぞれどのくらいの比率ですか 「自費もやっています」だけで、比率が出てこない
2 施術記録の書き方は、誰がどうやって教えていますか 「見て覚えてもらいます」― 教える仕組みがありません
3 返戻が出たとき、どう扱っていますか 担当者個人の責任にしている。ここは人柄が出ます
4 明細書の発行と説明は、誰がやっていますか 「受付に任せています」― 説明が施術者の仕事になっていません
5 保険が使えない方に、何を提供できますか 具体的なメニューが出てこない

3番を入れた理由を書いておきます。返戻は、記録の書き方を覚えている途中の人ほど起こします。そこで個人を責める会社では、記録は上手くなりません。隠すようになるからです。制度が厳しくなるほど、この差が効いてきます。

この5つは、当社にも同じように聞いていただいて構いません。

5年後、どんな人が残るのか

制度は今後も見直されていきます。オンライン請求とAI審査が本格化すれば、記録の整合性はさらに厳しく見られます。

そのなかで残るのは、手技が上手い人ではなく、手技が上手くて、それを説明でき、記録に残せる人だと考えています。

厳しい話に聞こえるかもしれません。ただ、これは「ごまかしが効かなくなる」という意味でもあります。まじめにやってきた人ほど、報われやすくなる変化だと受け止めています。

当社の考え方をひとつだけ書きます。素質 × 努力 × 時 = 成果。「期待」は「期を待つ」と書きます。記録も説明も、すぐには身につきません。身につくまでの時間を、会社が一緒に待てるかどうか。制度が変わるときほど、そこが問われると思っています。

この状況は、一つの院では変えられません

1施術所あたりの療養費が減り続けてきた背景には、請求の適正さが問われ続けてきたという事情があります。その問いに答えられる施術所が増えないかぎり、状況は変わりません。

抗議して変わることではないと考えています。変わるとすれば、記録と説明の質が業界全体で上がったときです。根拠のある記録と、患者さんへの丁寧な説明。それが当たり前になれば、疑われる理由そのものがなくなります。

だから当社は、やり方を外に出しています。

  • 同業の方に、有料で視察を受け入れています ― まちの整体整骨院(貝塚)と とっぷ整体整骨院。1社2名さままで、お一人38,500円(税込)。個人の方も受けられます
  • 育成の中身を文書にしています ― 教本は現在245ページ・14文書
  • 年間の勉強会カレンダーを、日程ごと公開しています

自社だけが良くなっても、業界の評価は変わりません。同じやり方をする施術所が増えることが、いちばん確かな道だと考えています。

私たちの理念は「たくさんの人を元気にする」です。強いものが弱いものから奪うのではなく、強いものが弱いものを助ける。それは社内に限った話ではないと思っています。

一緒に働く方には、自分の技術を上げるだけでなく、それを渡せる人になってほしいと考えています。教本にはこう書いています ―― 「渡せることが、最も高度な技術である」。

確かめに来てください

ここに書いたことは、見学で確認できます。カルテの書き方も、明細書の説明も、実際にやっているところを見ていただけます。

見学は60分。服装は自由で、その日に決めていただく必要はありません。国家試験の前でも歓迎します。案内役ではないスタッフと話していただく時間もつくります。

関連ページ

出典:療養費の総額・国民医療費に占める割合・改定の基本的な考え方は厚生労働省「柔道整復療養費の令和8年度改定の基本的な考え方(案)について」、施術所数は厚生労働省「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」。1施術所あたりの金額は、この2つの公表値から算出したものです。
本記事は2026年9月時点で当社が把握している内容にもとづき、整骨院で働く方への影響を整理したものです。制度の詳細・個別の算定・適用については、厚生労働省の通知や所属団体の資料をご確認ください。検索回数は検索キーワード調査ツールによる月間の推計値です。鍼灸受診率・姿勢分析件数・スタッフ数は当社の実績であり、業界の平均ではありません。
執筆:株式会社HCC 代表取締役 佐々木高則



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